蔵南地区

蔵南地区

蔵南地区(ぞうなんちく)または南チベット(なんチベット)[1]はチベット南部の地域呼称、中印国境紛争に関連して特定に地域を指す場合もある。

概要

チベット南部のヤルンツァンポ川ブラマプトラ川)中流域、西部にサガ県から、東部にメンリン県ヒマラヤ山脈南部からトランス・ヒマラヤ山系北部の一帯、東西約1,000 km、南北約300 kmの地域を指す。この定義によると、南部チベットとはシガツェ市ラサ市山南地区 及びニンティ市の大部分を含むことになる。また、山南地区及びニンティ市のヤルンツァンポ川及びその支流の一部、西部はラサ川との合流点から東部はメンリン県東部ヤルンツァンポ渓谷の始原地域までを指す場合もある。

中印国境紛争に関して言及される場合は、1914年シムラ条約で取り決められたマクマホンライン以南の地域の中華人民共和国側の呼称「藏南(Zàngnán)」で、現在、 インド共和国アルナーチャル・プラデーシュ州(漢字表記「阿鲁纳恰尔邦(阿魯納恰爾邦)」)として実効支配している地域を言う。中華人民共和国政府としては、名目上、西蔵自治区ロカ地区ツォナ・ゾン(錯那県)、ルンツェ・ゾン(隆子県)、ニャンティ地区メトク・ゾン(墨脱県)、ザユル・ゾン(察隅県)などの各ゾンに分割して帰属させている。

中国の六場戦争(六つの戦争)計画

詳細については、「中国人民解放軍#中国人民解放軍の「六場戦争(六つの戦争)」計画」も参照の事。

2013年7月中国政府の公式見解ではないとしながらも、中国の『中国新聞網』や『文匯報』などに、中国2020年から2060年にかけて「六場戦争(六つの戦争)」を行うとする記事が掲載された[2][3][4][5]。この「六場戦争(六つの戦争)」計画によれば、中国2020年から2025年にかけて台湾を取り返し、2028年から2030年にかけてベトナムとの戦争で南沙諸島を奪回し、2035年から2040年にかけて蔵南地区(アルナーチャル・プラデーシュ州)を手に入れるためインドと戦争を行い、2040年から2045年にかけて尖閣諸島沖縄日本から奪回し、2045年から2050年にかけて外蒙古モンゴル国)を併合し、2055年から2060年にかけてロシア帝国清朝から奪った160万平方キロメートルの土地(外満洲江東六十四屯パミール高原)を取り戻して国土を回復するという[2][3][5][4]

オーストラリア国立大学研究員のGeoff Wadeは、この記事について一部の急進主義者の個人的な見解にすぎないという意見があるが、中国の国営新聞も報道しており、中国政府の非常に高いレベルで承認されたものとみなすことができ、また中国の「失われた国土の回復」計画はすでに1938年から主張されていたと指摘している[3]

インドシンクタンクであるセンター・フォー・ランド・ワーフェア・スタディーズ(英語版)研究員のP.K.Chakravortyは、この記事では中国インドアッサム州シッキム州で独立運動や反乱活動を扇動して、パキスタンへの武器供与によるカシミール攻略などが示唆されており、それらが失敗した後にインドとの全面戦争という段階が想定されているが、シッキム州の現状は中国の執拗な工作が行われているにもかかわらず安定しており、独立運動を扇動するのは困難であり、また中国ミャンマーを介して発生させたアッサム州の暴動はインド政府ミャンマー政府の交渉によって沈静化しているとしながら、2035年までにインド軍は近代化を推進して能力を向上する必要があると指摘した[4]

脚注

  1. ^ 森浩 (2019年1月14日). “インド、国境付近で大規模道路整備へ 「戦略的道路」44カ所、中国に対抗”. 産経新聞. オリジナルの2021年7月6日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20210706235510/https://www.sankei.com/article/20190114-OQNFGE4CTFPIVKEX4WWHCA6S6Y/ 
  2. ^ a b
    • 李秋悅 (2013年7月8日). “中國未來50年裡必打的六場戰爭”. 文匯報. オリジナルの2013年9月19日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20130919044555/http://info.wenweipo.com/index.php?action-viewnews-itemid-62404 
    • Michelle FlorCruz (2013年11月26日). “China To Engage In 'Six Inevitable Wars' Involving U.S., Japan, India And More, According To Pro-Government Chinese Newspaper”. インターナショナル・ビジネス・タイムズ. オリジナルの2013年11月29日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20131129015131/http://www.ibtimes.com/china-engage-six-inevitable-wars-involving-us-japan-india-more-according-pro-government-chinese 
    • “中國公布新防空識別區 「六場戰爭」預言涵蓋美日俄”. インターナショナル・ビジネス・タイムズ. (2013年11月27日). オリジナルの2014年7月14日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20140714190823/http://www.ibtimes.com.cn/trad/articles/33922/20131127/donghai-fangkong-shibiequ.htm 
  3. ^ a b c Geoff Wade (2013年11月26日). “China’s six wars in the next 50 years”. オーストラリア戦略政策研究所. オリジナルの2013年11月27日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20131127105158/http://www.aspistrategist.org.au/chinas-six-wars-in-the-next-50-years/ 
  4. ^ a b c P K Chakravorty (2013年11月15日). “Responding to Chinese Article on the-Six Wars China is Sure to Fight in the next 50 Years”. センター・フォー・ランド・ワーフェア・スタディーズ(英語版). オリジナルの2014年11月1日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20141101055339/http://www.claws.in/1108/responding-to-chinese-article-on-the-six-wars-china-is-sure-to-fight-in-the-next-50-years-p-k-chakravorty.html 
  5. ^ a b “中国 対日・対ロ戦争開始の時期を明らかに”. ロシアの声. (2014年1月6日). オリジナルの2014年1月9日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20140109033401/http://japanese.ruvr.ru/2014_01_06/126925942/ 
東南南アジアにおける領有権紛争
形状 領土 実効支配している国 領有権を主張している国
土地: アクサイチン 中華人民共和国の旗 中華人民共和国 中華人民共和国の旗 中華人民共和国 中華民国の旗 中華民国1 インドの旗 インド
白頭山/長白山2 朝鮮民主主義人民共和国の旗 北朝鮮 中華人民共和国の旗 中華人民共和国 朝鮮民主主義人民共和国の旗 北朝鮮3 大韓民国の旗 韓国1 中華人民共和国の旗 中華人民共和国3 中華民国の旗 中華民国1
ボルショイ・ウスリースキー島/黒瞎子島 中華人民共和国の旗 中華人民共和国3 ロシアの旗 ロシア3 中華人民共和国の旗 中華人民共和国 ロシアの旗 ロシア 中華民国の旗 中華民国1
江心坡カチン州の一部) ミャンマーの旗 ミャンマー ミャンマーの旗 ミャンマー 中華民国の旗 中華民国1
カシミール2 インドの旗 インド パキスタンの旗 パキスタン インドの旗 インド パキスタンの旗 パキスタン
朝鮮半島/韓半島と付属島嶼2 大韓民国の旗 韓国 朝鮮民主主義人民共和国の旗 北朝鮮 大韓民国の旗 韓国 朝鮮民主主義人民共和国の旗 北朝鮮
中国大陸香港マカオ 中華人民共和国の旗 中華人民共和国 中華人民共和国の旗 中華人民共和国 中華民国の旗 中華民国1
プレアヴィヒア寺院 カンボジアの旗 カンボジア カンボジアの旗 カンボジア タイ王国の旗 タイ
北ボルネオ(サバ) マレーシアの旗 マレーシア マレーシアの旗 マレーシア フィリピンの旗 フィリピン1
外モンゴル モンゴルの旗 モンゴル モンゴルの旗 モンゴル 中華民国の旗 中華民国1
パミール高原2 アフガニスタンの旗 アフガニスタン3 タジキスタンの旗 タジキスタン3 中華人民共和国の旗 中華人民共和国3 アフガニスタンの旗 アフガニスタン タジキスタンの旗 タジキスタン 中華人民共和国の旗 中華人民共和国 中華民国の旗 中華民国1
江東六十四屯および外満洲 ロシアの旗 ロシア ロシアの旗 ロシア 中華民国の旗 中華民国1
鹿屯島 ロシアの旗 ロシア ロシアの旗 ロシア 大韓民国の旗 大韓民国1
アルナーチャル・プラデーシュ/蔵南 インドの旗 インド インドの旗 インド 中華人民共和国の旗 中華人民共和国 中華民国の旗 中華民国1
トゥヴァ/唐努烏梁海 ロシアの旗 ロシア ロシアの旗 ロシア 中華民国の旗 中華民国1
カラコルム回廊 中華人民共和国の旗 中華人民共和国 中華人民共和国の旗 中華人民共和国 中華民国の旗 中華民国1 インドの旗 インド
間島 中華人民共和国の旗 中華人民共和国 中華人民共和国の旗 中華人民共和国 大韓民国の旗 韓国1 中華民国の旗 中華民国1
島・水域: 尖閣諸島/釣魚台 中華人民共和国の旗 中華人民共和国 日本の旗 日本 中華人民共和国の旗 中華人民共和国 中華民国の旗 中華民国
金門 中華民国の旗 中華民国 中華民国の旗 中華民国 中華人民共和国の旗 中華人民共和国
サー・クリーク インドの旗 インド パキスタンの旗 パキスタン インドの旗 インド1 パキスタンの旗 パキスタン1
竹島/独島 大韓民国の旗 韓国 大韓民国の旗 韓国 朝鮮民主主義人民共和国の旗 北朝鮮1 日本の旗 日本
馬祖 中華民国の旗 中華民国 中華民国の旗 中華民国 中華人民共和国の旗 中華人民共和国
西沙諸島/パラセル諸島 中華人民共和国の旗 中華人民共和国 中華人民共和国の旗 中華人民共和国 中華民国の旗 中華民国  ベトナム
東沙諸島/プラタス諸島 中華民国の旗 中華民国 中華民国の旗 中華民国 中華人民共和国の旗 中華人民共和国
南沙諸島/スプラトリー諸島2 中華人民共和国の旗 中華人民共和国 中華民国の旗 中華民国 マレーシアの旗 マレーシア フィリピンの旗 フィリピン  ベトナム 中華人民共和国の旗 中華人民共和国 中華民国の旗 中華民国 マレーシアの旗 マレーシア フィリピンの旗 フィリピン  ベトナム ブルネイの旗 ブルネイ
マックルズフィールド堆及びスカボロー礁/中沙諸島4 中華人民共和国の旗 中華人民共和国 中華人民共和国の旗 中華人民共和国 中華民国の旗 中華民国 フィリピンの旗 フィリピン
蘇岩礁/離於島 大韓民国の旗 韓国 大韓民国の旗 韓国 朝鮮民主主義人民共和国の旗 北朝鮮1 中華人民共和国の旗 中華人民共和国5
北方領土/南クリル列島 ロシアの旗 ロシア ロシアの旗 ロシア 日本の旗 日本
台湾島および澎湖諸島 中華民国の旗 中華民国 中華民国の旗 中華民国 中華人民共和国の旗 中華人民共和国
フーコック島  ベトナム  ベトナム カンボジアの旗 カンボジア1
ナトゥナ諸島 インドネシアの旗 インドネシア インドネシアの旗 インドネシア 中華人民共和国の旗 中華人民共和国4 中華民国の旗 中華民国1
註記: 1あまり積極的ではない。
2全体の領有権を主張する複数の国によって事実上分割されている。
3両国間では事実上解決済みである。
4中華人民共和国はマックルズフィールド堆及びスカボロー礁を独自に中沙諸島と総称している。
5島自体ではなく、周辺の海域について権利を主張している。